
「災害時の停電に備えたい」「エネルギーの自給自足を目指したい」「電気代を少しでも抑えたい」というニーズの高まりとともに、蓄電池の導入を検討する家庭や法人が増えています。
その中でも、特に注目されているのが20kWhクラスの大容量蓄電池です。
日常の電気代の削減対策としても、気候変動による激甚化災害への備えとしても、十分すぎる容量といえます。
一方で、一般的な家庭用の蓄電池の容量である5kWh〜10kWhに比べると容量が多く、「本当にその容量が必要なのか?」の精査が必要です。
容量が大きくなればなるほど導入費用も高くなるので、「とにかく容量の大きいもの」という基準だけで選んでいては損をしてしまいます。
家庭用としての導入にはシミュレーションでの検討が必須です。
この記事では、20kWhクラスの大容量蓄電池に関心のある方に向けて、大容量蓄電池の導入メリット・デメリットをはじめ、導入検討に必要な情報を詳しく解説します。
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そもそも大容量蓄電池とは?

一般的に、家庭用・業務用のどちらも10kWh以上の蓄電容量を持つものを「大容量蓄電池」と言います。
または、産業用蓄電池とも呼ばれます。
従来の家庭用蓄電池が5kWh~10kWh程度だったのに対し、20kWhという容量はその約2倍です。
20kWhクラスの大容量蓄電池であれば、太陽光発電と連携することで、昼間に発電した電力を蓄電池に貯めて夜間も利用できるため、自家消費率が大きく向上します。
「小容量蓄電池」と「大容量蓄電池」の違いをまとめると次の通りです。
小容量蓄電池 | 大容量蓄電池 | |
---|---|---|
容量 | 10kWh未満 | 10kWh以上 |
想定使用範囲 | 照明・冷蔵庫など一部 | 家全体・事業用途にも対応 |
給電方式 | 特定負荷対応が主流 | 全負荷対応が可能 |
停電対応力 | 数時間〜半日程度 | 丸1日〜2日連続運用可能 |
設置方法 | 小型で設置自由度高 | 重量・寸法が大きく計画が必要 |
主な利用層 | 一般家庭 | 多人数家庭・在宅勤務者・法人施設など |
「20kWh」とはどれくらいの電力量?
20kWhの大容量蓄電池が家庭用や業務用としてどの程度の電力をまかなえるのかを見ていきましょう。
一般家庭での利用の場合

一般家庭の1日あたりの電力消費量は世帯人数や季節によって違いはありますが、3人~4人の家庭で約13kWhです。
したがって、家庭用で20kWhの蓄電池があれば、停電時でも冷蔵庫・照明・スマートフォン充電・テレビなど最低限の機器であれば1日間~2日間程度の使用が可能です。
業務用での利用の場合

業務用施設の1日あたりの電力消費量は業種や設備によって異なります。
小規模飲食店やクリニック・歯科医院、小規模オフィスの場合、20kWhの蓄電池があれば、停電時に次のような最低限の事業継続が可能です。
- 小規模飲食店:冷蔵・冷凍庫、レジ、空調などを数時間~半日稼働可能
- クリニック・歯科医院:電子カルテ端末、照明、診察機器の稼働維持
- 小規模オフィス:PC、ルーター、電話設備などを稼働維持
したがって、業務用の20kWhの蓄電池は、BCP対策(事業継続計画)のための「非常用電源」として十分な容量ということになります。
大容量蓄電池を導入するメリット

「本気で自給自足」や「本気で災害対策」をしたい家庭や施設には、20kWh以上の大容量蓄電池が現実的な選択肢になります。
その主なメリットは、次の5つです。
- メリット1:災害による停電時でも安心して電気が使える(全負荷対応)
- メリット2:ピークシフト・ピークカットの効果が最大化でき、電気代の削減効果が大きくなる
- メリット3:電気自動車に充電も同時に行えるようになる
- メリット4:太陽光発電システムの初期費用の回収期間が短くなる
- メリット5:BCP(事業継続計画)対策にも活用できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1:災害による停電時でも安心して電気が使える(全負荷対応)
20kWhの蓄電池があれば、冷蔵庫や照明・テレビ・Wi-Fi・スマートフォン・IH調理器・エアコンなど、家全体の電力(全負荷)に対応することが可能です。
これにより、地震や台風、大雪などの災害による停電が1日~2日続いても、生活を止めずに安心して過ごすことができます。
5kWh~10kWhクラスの小容量蓄電池では、特定負荷(冷蔵庫や一部の照明など)への給電が一般的ですが、20kWhクラスの大容量蓄電池は全負荷対応です。
したがって、「家全体の電気を丸ごと止めずに維持できる」という「次元の違う活用」が可能となります。
落雷や地震、台風などによる停電の多発が予想される地域では「安心資産」となるでしょう。
メリット2:ピークシフト・ピークカットの効果が最大化でき、電気代の削減効果が大きくなる
一般家庭で太陽光発電と蓄電池を併用すると、日中に太陽光で発電した電力を蓄電池に貯めておき、夕方~夜間の電気消費量の多い時間帯に蓄電池に貯めた電気を使うことが可能となります。
このように、電力需要の少ない時間帯に電力を蓄電し、ピーク時間帯に使用する手法は「ピークシフト」と呼ばれています。
一方、電力需要の高い時間帯に蓄電池の電力を利用し、電力会社からの購入量を抑える手法が「ピークカット」です。
契約プランや事業施設によっては、ピークカットにより契約電力の見直しができ、基本料金削減につながるケースもあります。

前述のように、一般家庭の電力消費量は1日当たり約13kWhですから、8kWh以上の太陽光発電システムと20kWhの蓄電池を組み合わせれば、電力会社に頼らない「電気代ゼロ=完全オフグリッド」の生活に近づけることができます。
これは家庭に限らず、飲食店や小規模事業所、介護施設などでも実施可能で、契約電力の引き下げによる基本料金の削減につながり、電力コスト削減の手段として有効です。
完全オフグリッド生活の実現には20kWh以上の蓄電池が最低ライン
完全オフグリッド(complete off-grid)生活とは、電力会社などの商用電力網(グリッド)に一切接続せず、自家発電(太陽光発電や風力発電など)と蓄電設備(蓄電池)だけで全ての電力をまかなうスタイルのことです。
このような完全オフグリッド生活を実現するには、20kWh以上の蓄電池が「最低ライン」であり、現実的には30kWh~50kWhクラスの蓄電池を使用することが主流になりつつあります。

つまり、20kWhクラスの蓄電池は、完全オフグリッド生活に踏み出す第一歩になるのです。
メリット3:電気自動車に充電も同時に行えるようになる
20kWhクラスの蓄電池があれば、電気自動車に充電しながら家庭にも給電する「双方向利用」が可能になります。
さらに、V2H(Vehicle to Home)システムと組み合わせれば、災害による停電時には、電気自動車から家庭へ給電することもできるため、電気自動車も蓄電池代わりに利用できるようになります。
メリット4:太陽光発電システムの初期費用の回収期間が短くなる
近年、太陽光発電のFIT売電価格は年々下落しているので、太陽光発電の電力を売電するよりは、家庭や施設で自家消費した方が経済効果が圧倒的に高くなります。
もし20kWhクラスの大容量蓄電池があれば、日中の太陽光発電による電力を夜間や悪天候時に利用して自家消費率を向上させ、太陽光発電システムの初期費用の回収期間を短くすることができます。
メリット5:BCP(事業継続計画)対策にも活用できる
業務用として蓄電池を利用している場合、医療施設や介護施設・工場・コンビニ・クリニックなどでは、災害による停電時でも業務を継続できるという大きなメリットがあります。
20kWhクラスの蓄電池を導入していれば、停電が発生しても医療機器や照明、冷暖房機器、通信機器などの重要機器の稼働を維持することができるからです。
特に、電力供給の不安定なエリアや、避難所に指定されている施設では、災害対応力を高めるインフラ投資としての価値も高まっています。
大容量蓄電池を導入するデメリット

大容量蓄電池は、災害対策やエネルギー自給において非常に心強い設備ですが、大容量ゆえのデメリットも存在します。
主なデメリットとして、次の3つを挙げることができます。
- デメリット1:導入時の初期費用が高額になる
- デメリット2:設置場所と設置条件に制約がある(追加工事が必要になる場合もある)
- デメリット3:大容量蓄電池を持て余す可能性がある
以下で、詳しく見ていきましょう。
デメリット1:導入時の初期費用が高額になる
20kWhクラスの蓄電池の導入初期費用は高額です。
製品・地域・工事内容により大きく異なりますが、本体価格に制御機器価格や工事費を加えると、総額300万円~500万円以上になることが一般的で、太陽光発電との同時導入を検討している場合は、総額が700万円超になるケースもあります。
国や自治体の補助金制度を利用することが可能ですが、その場合でも数百万円単位の負担が生じます。
初期費用が高額になれば、その分支払った費用の元を取る(投資回収期間)は長くなるので、いかにこの費用を下げるのかを検討することが重要です。
デメリット2:設置場所と設置条件に制約がある(追加工事が必要になる場合もある)
20kWhクラスの大容量蓄電池は、非常に大きく重量(200kg~300kg以上)もあるため屋外設置が基本で、十分なスペースが必要になります。
そもそも狭小住宅地など敷地に余裕のない場所には設置できません。
また、スペースが確保できる場合でも、地盤の補強工事や基礎工事、通風対策・雨対策などが必要になることもあります。
デメリット3:大容量蓄電池を持て余す可能性がある
家庭用として20kWhクラスの大容量蓄電池を導入した場合、想定よりも電力消費量が少なくて、貯めた電気を使い切れないというケースが考えられます。
特に世帯の人数が少ない場合や、共働きで日中に電力をあまり使わない生活をされている場合は、そもそもの電力使用量が少ないため容量を持て余してしまいます。
蓄電池は、容量が大きければ良いというわけではなく、家庭や施設の電力消費量に応じて適切に選択しないと初期費用が高額になり、元を取れずに損をしてしまう可能性もあるので容量の検討は慎重に行いましょう。
大容量蓄電池の価格相場
大容量蓄電池を導入する際に、最も気になるのは価格です。
蓄電池の価格は容量だけでなく、給電方式(特定負荷型か全負荷型か)や設置方法、制御システム、メーカー、販売業者などによって異なります。
ここでは、家庭用や業務用として使われる大容量蓄電池について、次の容量帯に分けて価格相場とその特徴・活用シーンを解説します。
- 10kWh~15kWhの場合
- 15kWh~20kWhの場合
- 20kWhを超える場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
10kWh~15kWhの場合
10kWh~15kWhの容量帯の価格相場は、設置費込みで200万円~300万円前後です。
この容量帯は一般家庭用蓄電池のスタンダードクラスで、特定負荷(冷蔵庫・照明・Wi-Fiなど)の長時間バックアップに適しています。
多くのZEH住宅でも、この容量帯の蓄電池がよく導入されています。
5kWh~7kWhの太陽光発電と組み合わせると、自家消費率を高めやすく光熱費の削減にも効果的です。
ただし、災害対応としては最低限の容量のため、本格的な災害対策を考える場合はやや物足りなさを感じる容量と言えます。
15kWh~20kWhの場合
15kWh~20kWhの容量帯の価格相場は、設置費込みで300万円~400万円前後です。
この容量帯になると、家全体の電源をバックアップできる全負荷対応の製品が多くなります。
この容量帯は全負荷対応なので、エアコンやIH調理器・洗濯機・テレビなど、停電時でもほぼ日常と変わらない生活を継続することができます。
オール電化住宅や在宅勤務が多い家庭、4人以上の家族構成など、日々の電力消費量が多い家庭には特におすすめです。
また、太陽光発電との相性もよく、自家消費率アップによる電気代削減効果も高くなります。
20kWhを超える場合
20kWhを超える容量帯の価格相場は設置費込みで400万円~600万円以上です。
家庭用としては最上位クラスで、全負荷対応なので2日~3日以上の停電でも「止まらない暮らし」を確保することができます。
太陽光発電と組み合わせれば、自家消費率を上げて完全オフグリッドまで視野に入れることが可能です。
また、業務用としては、BCP(事業継続計画)対策に必要なバックアップ電源が確保できます。
消費電力の多い家庭や業務用施設などがおすすめの導入先です。
大容量蓄電池の初期費用を抑えるためのポイント

大容量蓄電池は導入コストが高額になるのがネックですが、次のような工夫によって初期費用を抑えることが可能です。
- 国や自治体の補助金を活用する
- 用途に合った最適な容量を選ぶ
- 複数業者から見積もりを取って比較する
それぞれ詳しくみていきましょう。
国や自治体の補助金を活用する
20kWhクラスの大容量蓄電池は、本体費用の他に工事費用などがかかるので、総額400万円~600万円という高額になることがあります。
この費用負担を軽減するためには、国や自治体の補助金制度を積極的に活用することが有効です。
たとえば、次のような補助金を活用すれば、数十万~最大100万円超の削減が可能です。
- 国の「ZEH支援事業」「先進的再エネ活用補助金」
- 自治体の「住宅用蓄電池補助金」
補助金には設置条件があり、予算枠が決まっているため申請期限前に募集が終わってしまうこともあります。
導入前に各制度を確認し、補助金申請代行などをしているような、対応に慣れた施工業者を選ぶことがポイントです。
タイナビ蓄電池では、補助金申請代行なども行える業社の中から一括で5社の見積もりを無料で取ることができるので、ぜひ活用してみてください。


用途に合った最適な容量を選ぶ
蓄電池は容量が大きくなればなるほど、本体価格が高くなります。
たとえば、一般的な容量と価格の関係は次表の通りです。
容量 | 価格の目安(設置費込) |
---|---|
10kWh前後 | 約200万円〜250万円 |
15kWh前後 | 約250万円〜350万円 |
20kWh前後 | 約350万円〜450万円 |
25kWh〜30kWh超 | 約500万円以上 |
「将来使うかもしれないので、大きい方が安心」という選び方をするとコストが増加してしまうので、自分自身の電力消費量や利用目的に合った適切な容量を選ぶことが初期費用を削減するポイントです。
利用目的別に適した容量の目安は、次表の通りです。
利用目的 | 適した容量 |
---|---|
夜間の節電・太陽光活用 | 10kWh〜12kWh |
冷蔵庫や照明を停電時に確保 | 12kWh〜15kWh |
家全体バックアップ(全負荷) | 16kWh〜20kWh以上 |
完全オフグリッド・業務用途 | 20kWh〜30kWh以上 |
複数業者から見積もりを取って比較する
蓄電池の本体価格は、業者によって100万円以上の差が出ることも珍しくありません。
また、業者によって工事費の内容や金額、補助金の対応力、保証・アフターサポート内容なども違います。
そのため、複数の業者に同一条件(容量・出力・設置場所など)で相見積もりを取ることが重要です。
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大容量蓄電池の導入はどんな家庭や施設への導入がおすすめ?
10kWhクラス以上の大容量蓄電池は、誰にでも必要な設備というわけではありません。
しかし、特定の生活スタイルや業務形態の場合は、費用対効果が高くなるのでおすすめです。
ここでは、「導入をおすすめできる家庭・施設」の具体的な条件や特徴について、家庭用・業務用それぞれについて紹介します。
導入がおすすめできる家庭
大容量蓄電池の導入がおすすめできる家庭は、簡単に言えば以下のような電力消費量の多い家庭です。

オール電化+太陽光発電を導入している家庭
オール電化住宅では、調理・暖房・給湯すべてを電力でまかなうため、電気使用量が必然的に多くなります。
そのため、太陽光発電を導入している家庭が多いのですが、加えて大容量蓄電池を導入すると、日中に発電した電気を夜間に利用する自家消費を増やすことができるようになります。
これによって、効率的な電気の自給自足ができ、電気代の大幅削減が可能となるためおすすめです。
在宅勤務や長時間在宅の家庭
在宅勤務などで日中も家にいる時間が長い家庭では、昼間の電力消費が多くなるため、太陽光発電+蓄電池の導入がおすすめです。
通常時の電気代の削減効果もありますし、停電時でも仕事を中断することなく、安心して在宅ワークを継続できるというメリットもあります。
オフィス兼自宅として自宅で仕事をされているような自営業の方などにおすすめです。
ただし、それでも20kWhは容量として多いため、「実際にどれぐらいの電気を使っていて、大容量蓄電池を導入することでどれぐらい電気代削減になり、何年ほどで投資が回収できるのか?」のシミュレーションは必須です。
防災意識が高く停電対策を重視している家庭
防災意識が高くて、ライフラインの寸断に備えたいと考えている家庭にもおすすめです。
家族構成やライフスタイルによって最適な容量は変わりますが、大容量蓄電池の導入によって1日間~2日間の停電でも支障のない生活が送れるようになります。
導入がおすすめできる施設
法人が業務用として導入する分には20kWhはおすすめの容量と言えます。
業種や規模によっても異なりますが、以下のような施設におすすめです。

医療施設・福祉施設・介護施設など
医療施設や福祉施設・介護施設などのように、停電時でも医療機器や空調機器、通信機器の稼働を継続する必要がある施設にとっては、大容量蓄電池はBCP(事業継続計画)の要となります。
飲食店・小売店舗・食品加工業など
飲食店・小売店舗・食品加工業などで冷蔵・冷凍設備が不可欠な施設では、停電時の食材廃棄リスクを回避するために大容量蓄電池が必要です。
BCP対策だけでなく、平常時のピークカットによる電気料金の削減にも効果的です。
中小規模の工場や作業場など
電力消費量の大きい機械や照明を使用する工場や作業場などの施設では、災害時のBCP対策と平常時の電力基本料金削減(契約電力の見直し)に有効です。
太陽光発電を併用することで、さらに電力コストの最適化を図ることができます。
こんな家庭や施設は導入しない方が良い
一方で、大容量蓄電池は「万能な設備」ではなく、導入してもメリットが小さい、もしくは費用対効果が見合わないケースも存在します。
たとえば、家庭用では次のようなケースです。
- 日中の電力消費が少ない家庭(共働きなどで不在など)
- 太陽光発電を導入していない家庭
- 高齢者世帯(初期費用の回収期間が長くなるなど)
業務用の施設では次のようなケースです。
- 停電時のBCP対策が不要な施設(倉庫など)
- 設置スペースが確保できない施設
「容量が大きければ良い」という訳ではないので、自宅や自社の使用量にあった容量を選びましょう。
【大容量蓄電池の活用シーン別】費用対効果シミュレーション
実際に、家庭用・業務用それぞれの活用シーン別に、大容量蓄電池を導入する場合、どれぐらいの初期費用がかかるのか、年間効果金額や投資回収期間はどれぐらいか、のシミュレーションをしてみましょう。
家庭用としての利用の場合

家庭用に大容量蓄電池を導入する場合は、「電気代の節約」と「売電による収入」、そして「停電時の安心」という3つの費用対効果の検証が必要です。
以下では、次の2つのケースについて見ていきましょう。
- 事例1:大容量蓄電池を単独で導入する場合
- 事例2:大容量蓄電池を太陽光発電と併用する場合
事例1:大容量蓄電池を単独で導入する場合
一般家庭に大容量蓄電池を単独で導入する場合は、電気が安価な深夜に蓄電し、それを日中につかうことで電気代を節約できます。
20kWhの大容量蓄電池を単独で導入した場合のシミュレーション結果は次の通りです。
導入設備 | 20kWh蓄電池(単独) |
---|---|
初期費用 | 400万円 |
年間効果金額 | 約5万円〜6万円(安価な深夜電力を活用し蓄電、日中に使用) |
投資回収期間 | 約66年〜80年 |
大容量蓄電池を単独で導入する場合は、年間効果金額は小さく投資回収に非常に長い期間がかかってしまいます。
「電気代削減」を目的として導入するのであれば容量を持て余してしまい損をしてしまうため、おすすめできません。
防災・停電時の安心を重視する家庭で、費用対効果を求めていないという場合にのみ検討するのがおすすめです。
そのため、蓄電池の単独導入は、防災・停電対策を最重視する場合や、医療機器を常時使用している家庭などで、安心・安全を目的としたケースに限った選択肢と言えるでしょう。
事例2:大容量蓄電池を太陽光発電と併用する場合
一般家庭に大容量蓄電池と太陽光発電を同時設置する場合は、太陽光で発電した電気を蓄電し、日中につかうことで電気代の大幅な削減が見込めます。
また、使用できなかったあまりの電気を売ることで収入も得ることが可能です。
20kWhの大容量蓄電池と10kWh太陽光発電を導入した場合のシミュレーション結果は次の通りです。
導入設備 | 20kWh蓄電池+10kW太陽光発電 |
---|---|
初期費用 | 650万円 |
年間効果金額 | 約12万円〜15万円(自家消費による節電効果)+約5万円(売電収入)=約17万円〜20万円 |
投資回収期間 | 約32年〜38年 |
太陽光発電と組み合わせることで、日中に発電した電気を蓄電池に貯めて夜間に使用するというサイクルが実現して、電気代削減の効果が高まります。
また、停電時にも家全体をバックアップできる全負荷対応が可能な点も大きな魅力です。
ただし、投資回収期間は約32年〜38年と長いため、いくら災害対策になると言っても、大容量の蓄電池を入れれば良いという訳ではありません。
蓄電池の耐用年数を超えた投資回収期間は現実的ではないため、家庭用の場合はもっと自家での使用電気量に応じた容量の蓄電池を検討しましょう。
一方で、オール電化の家庭などであれば、年間の電気代の平均は20万円ほどです。(電力会社や、契約プラン、電気代高騰など時制によって変わる)
オール電化のご家庭に導入する場合のシミュレーションは次の様になります。
導入設備 | 20kWh蓄電池+10kW太陽光発電 |
---|---|
初期費用 | 650万円 |
年間効果金額 | 約20万円(自家消費による節電効果)+約5万円(売電収入)=約25万円 |
投資回収期間 | 約26年 |
それでも投資回収期間は約26年になってしまいます。
災害時の安心などを考えれば許容範囲かもしれませんが、やや投資回収期間が長めです。
そのため、家庭用として20kWhを導入する場合には国や自治体の補助金を活用して初期費用を減らし、一括見積もりで初期費用が安い業者を探し、投資回収期間を少なくとも15年以内に短縮できないかを検討しましょう。


業務用の利用の場合

業務用としての大容量蓄電池導入は、「電気代の基本料金削減」と「売電」、そして国が力を入れている「BCP対策」の面で検証が必要です。
以下では、次の2つの業種の法人について、20kWh蓄電池と太陽光発電を導入した場合でシミュレーションしてみましょう。
- 事例1:中規模飲食店の場合
- 事例2:クリニックの場合
事例1:中規模飲食店の場合
中規模飲食店に大容量蓄電池と太陽光発電を導入する場合は、「電気代の削減」と「売電」により、どれぐらいの投資回収期間になるか、の検証が必要です。
シミュレーション結果は次の通りです。
導入設備 | 20kWh蓄電池+6kW太陽光発電 |
---|---|
初期費用 | 500万円 |
年間効果金額 | 約60万円(電気代削減+売電) |
BCP効果 | 食材の廃棄防止、営業継続による売上維持 |
投資回収期間 | 約8.3年 |
飲食店では冷蔵・冷凍設備を使用しているので、電気代の削減によるコストメリットが大きく、投資回収期間も約8.3年と十分です。
また、飲食店の場合は停電時の食材の廃棄防止や営業継続などのBCP効果も大きくなります。
停電時の営業継続による顧客の信頼維持や、BCP対策としての安心が得られるというメリットも換算すると20kWhの大容量蓄電池は十分な容量と言えるでしょう。
事例2:クリニックの場合
クリニックに大容量蓄電池と太陽光発電を導入する場合のシミュレーション結果は次の通りです。
導入設備 | 25kWh蓄電池+8kW太陽光発電 |
---|---|
初期費用 | 600万円 |
年間効果金額 | 約50万円(電気代の削減+売電) |
BCP効果 | 医療機器・冷蔵保存薬・電子カルテなどの稼働維持 |
投資回収期間 | 約12年 |
医療施設では、停電による医療機器の稼働停止が人命に関わるリスクを伴います。
そのため、経済的メリットだけでなく、医療提供の責任と信頼を守るインフラとしての導入意義が大きくなります。
代表的な大容量蓄電池(10kWh~20kWh超)の一覧
近年、10kWh以上の大容量蓄電池の製品ラインナップが充実してきており、用途や予算に応じた選択肢が広くなっています。
次表で、主要メーカーが提供している10kWh~20kWh超の大容量蓄電池の、容量・給電方式・参考価格を紹介します。
メーカー名 | 製品名 | 容量 | 給電方式 | 参考価格帯(税込・設置費込) |
---|---|---|---|---|
ニチコン | トライブリッド蓄電システム | 16.6kWh | 全負荷 | 約300万円〜400万円 |
京セラ | Enerezza (エネレッツァ) | 15kWh | 全負荷 | 約350万円〜500万円 |
長州産業 | スマートPVマルチ | 16.4kWh | 全負荷 | 約300万円〜400万円 |
オムロン | マルチ蓄電プラットフォーム | 16.4kWh | 特定負荷/全負荷 (選択可) | 約280万円〜400万円 |
ダイヤゼブラ電機 | EIBS7 (アイビスセブン) | 14.08kWh | 全負荷 | 約300万円〜450万円 |
※参考価格は目安であり、設置条件・業者などによって変動します。
大容量蓄電池は電気代削減にも停電対策にも強い味方!

この記事では、大容量蓄電池の定義や導入メリット・デメリットをはじめ、費用対効果のシミュレーションや代表的な大容量蓄電池の一覧などについて詳しく解説しました。
20kWhなどの大容量蓄電池は、家庭用としても業務用としても、電気代の節約・電力の自給自足・停電対策などに力を発揮してくれます。
しかしながら、初期費用は高額なため、導入に際しては「補助金」×「最適容量の選定」×「見積比較」の3本柱により初期費用をいかに安くするかの検討が重要です。
業者によって、本体価格や工事費、補助金の対応力、保証・アフターサポート内容などが違ってくることもあるので、複数業者に同一条件で相見積もりを取ることが重要です。
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