
再生可能エネルギーへの関心が高まるなか、電気自動車(EV)は「走るための車」だけではなく、家庭用の「蓄電池」としても活用できる時代になりました。
EVに搭載される大容量バッテリーを上手に使えば、電気代の節約や停電時の非常用電源などとして、生活の安心と快適さを高められます。
さらに、太陽光発電と組み合わせることで、自宅で電気を「つくる・ためる・つかう」エネルギー循環型の暮らしを実現することも可能です。
この記事では、EVを蓄電池として活用するための「トライブリッド蓄電システム」について詳しく解説します。
電気自動車(EV)を蓄電池として使うことはできる?

電気自動車(EV)には、車を動かすための大容量バッテリーが搭載されており、これを家庭に電力を供給する「蓄電池」として活用することができます。
EVに蓄えた電気を家庭で使う仕組みを「V2H(Vehicle to Home)」と呼び、これを実現するには専用のV2Hシステムを使用します。
たとえば、日中に太陽光発電で作った電気をEVに充電し、夜間や停電時にその電気を家庭へ供給することが可能です。
つまり、EVは「走るだけでなく、電気をためて使う」新しいエネルギー活用の形を実現する存在といえます。
電気自動車(EV)を蓄電池として使うメリット

電気自動車(EV)を蓄電池として利用することにより、家庭のエネルギー活用に多くのメリットが生まれます。
主なメリットは、次の4つです。
- 蓄電容量が大きい
- 停電・災害時の非常用電源になる
- 太陽光発電との相性が良い
- 電気代を削減できる
以下では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
蓄電容量が大きい
電気自動車(EV)のバッテリーは、一般的な家庭用蓄電池(5.0~7.0kWh程度)よりも大容量です。
蓄電容量が大きいため、家庭用蓄電池よりも長時間にわたって家電を使うことができます。
たとえば日産リーフには、40kWhまたは62kWhのバッテリーを搭載するモデルがあり、家庭での使用にも十分な容量です。
さらに、オプションの「可搬型EVパワーコンディショナ」を導入すれば、EVを移動式の大容量蓄電池として活用することが可能です。
ニチコンの「パワー・ムーバー」はその代表例で、EVのバッテリーから電気を取り出し、家電に給電できるトランクサイズの装置として知られています。
また、電気自動車を定置式蓄電池として利用し、家庭全体に電気を供給することも可能で、この場合は「V2Hシステム」が必要です。
さらに、EVはガソリン車に比べて走行コストが低いというメリットもあるため、同じ距離を走る場合、電気代はガソリン代の約6分の1程度に抑えることが可能です。
電気自動車(EV)と蓄電池の蓄電容量の比較
家庭用蓄電池の蓄電容量は一般的に5kWh前後で、小型タイプでは2kWh程度、大型でも12kWh程度が中心です。
これに対して、電気自動車(EV)の蓄電容量は、次のような例があります。
| 電気自動車 (EV) | 日産リーフ | 24kWh~62kWh |
|---|---|---|
| テスラ | 75kWh~100kWh | |
| 三菱自動車 i-MiEV | 10.5kWh~16kWh | |
| 定置型蓄電池 | 2kWh~12kWh | |
この表からも分かるように、EVは定置式蓄電池よりも大容量で、長時間の電力供給が可能となります。
停電・災害時の非常用電源になる

大規模な停電や災害が発生した際、電気自動車(EV)は家庭の非常用電源として活躍します。
たとえば日産リーフの62kWhモデルであれば、約2~3日分の家庭の電力をまかなうことが可能です。
冷蔵庫や照明などの家電を稼働させたり、スマートフォンを充電したりすることもできるため、停電時でも安心して過ごせます。
また、EVは走行して別の場所へ移動できるため、避難先や親族宅などでも電力を供給できます。
こうした柔軟な使い方ができるのは、定置式蓄電池にはないEVならではのメリットです。
太陽光発電との相性が良い

太陽光発電と電気自動車(EV)は相性の良い組み合わせです。
日中に太陽光で発電した電気をEVに充電し、夜間にその電気を家庭で使用すれば、自家消費率を高めることができます。
結果として、電力会社から購入する電気の量を減らし、電気代の削減につなげられます。
さらに、余剰電力を売電するよりも、自家消費した方が経済的なケースも少なくありません。
再生可能エネルギーを自家消費することで、環境負荷の低減により貢献できるようになります。
太陽光発電とEVを組み合わせることで、エネルギーを「つくる・ためる・つかう」循環型の暮らしを実現できます。
電気代を削減できる
電気自動車(EV)を蓄電池として活用すれば、家庭の電気代を削減できます。
夜間の安い電力(深夜電力)で充電し、昼間の電気料金が高い時間帯にEVから給電することで、効率的に電力コストが抑えられるのです。
とくに、時間帯別料金プランや電力料金が変動するプランを採用している家庭では、この方法による節約効果があり、年間で数万円単位の削減も期待できます。
効率的に電気を使い分けることで、家計にも環境にも優しい暮らしを実現できます。
電気自動車(EV)を蓄電池として使うデメリット

一方、電気自動車(EV)を蓄電池として使うことによるデメリットとして、次の2つが挙げられます。
- バッテリーの劣化が早まる可能性がある
- 給電・充電ができない時間がある
以下では、それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
バッテリーの劣化が早まる可能性がある
電気自動車(EV)のバッテリーは、充放電回数に限りがあります。
なぜなら、家庭への給電(V2H)や電力網への供給(V2G)を頻繁に行うと、充放電の回数が増え、バッテリーの劣化が早まるおそれがあるからです。
特に、高温の環境で充放電を繰り返したり、満充電や深放電を繰り返したりすると、バッテリーの劣化が早まり、寿命を縮めてしまう原因になります。
EVを蓄電池として長く活用するには、充電量を80%程度に抑えたり、急速充電を頻繁に行ったりしないようにすることが大切です。
電気自動車(EV)と蓄電池の寿命
バッテリーの寿命とは、充放電を繰り返すうちに蓄電容量が少しずつ減少して、メーカーが定めた交換基準を下回るまでの期間です。
電気自動車(EV)と家庭用蓄電池では、バッテリーの使われ方が異なるため、劣化の進み方にも違いが見られます。
具体的には、EVは走行距離や充電環境によって充放電の頻度や負荷が変わるのに対し、家庭用蓄電池は比較的安定したリズムで電気を「ためる・使う」を繰り返します。

このように使用条件が一定なため、家庭用蓄電池の方がバッテリーの劣化が緩やかで、より長期間使用できる傾向があるのです。
一般的な寿命の目安の比較は、次の表の通りです。
| 電気自動車(EV) の寿命の目安 | 走行距離で16万km程度 使用年数で8年 |
|---|---|
| 家庭用蓄電池 の寿命の目安 | 充放電サイクルで6,000~12,000回 使用年数で10~20年(1日1~2回の充放電の場合) |
家庭用蓄電池では、メーカーによっては容量保証10年(60~70%残存)を設ける製品もあります。
バッテリーの劣化を早める主な要因としては、高温環境、満充電・深放電の繰り返し、急速充電の多用などが挙げられます。
EVを蓄電池として長く活用するには、充電量を80%程度に抑えるなどの工夫に加え、急速充電を頻繁に行わないことも劣化を抑えるポイントです。
また、直射日光が当たる場所での長時間駐車を避けるなど、温度管理にも注意が必要です。
給電・充電ができない時間がある
電気自動車(EV)を蓄電池として利用できるのは、車が自宅に駐車し、V2Hシステムに接続されているときに限られます。
そのため、通勤や買い物などで外出している間や、車検などでEVが手元にない期間は、家庭に電力を供給することができません。
このようにEVには給電・充電ができない時間帯があるため、常時電力を利用したい場合は、家庭用蓄電池を併用することを検討しましょう。
電気自動車(EV)+蓄電池+太陽光発電(トライブリッド蓄電システム)ならデメリットを補える!

電気自動車(EV)には、蓄電池として多くのメリットがありますが、「バッテリーの劣化が早まる」「給電できない時間がある」などの制約もあります。
こうしたデメリットを解消し、より安定した電力運用を可能にするのが「トライブリッド蓄電システム」です。
EV・蓄電池・太陽光発電を組み合わせたトライブリッド蓄電システムを導入すれば、次のようなメリットが得られます。
- バッテリーの劣化を緩和できる
- 給電・充電ができない時間をカバーできる
- 災害時の電力供給がより安定する
- ライフスタイルの変化に合わせて柔軟に対応できる
- 長期的な投資価値が高い
以下で、それぞれどのようなメリットなのかを詳しく見ていきましょう。
バッテリーの劣化を緩和できる
トライブリッド蓄電システムの導入により、EVのバッテリーに過度な負担をかけずに運用することが可能です。
太陽光発電による電力をいったん家庭用蓄電池にためて、その電力を優先的に使用する仕組みになっているため、EVの充放電回数を減らせます。
その結果、バッテリーの劣化を抑え、EVをより長く快適に利用できるようになります。
給電・充電ができない時間をカバーできる
トライブリッド蓄電システムを導入すると、電気自動車(EV)が外出中で自宅にいない時間帯でも、家庭用蓄電池がバックアップとして機能します。
たとえば、昼間に太陽光で発電した電力を家庭用蓄電池にためておけば、夜間にEVが自宅になくても家庭の電力をまかなうことが可能です。
EVが自宅になく、給電・充電ができない時間帯でも安定して電力を使うことができ、日常生活の電力不安を軽減できます。
災害時の電力供給がより安定する
停電時には、電気自動車(EV)・家庭用蓄電池・太陽光発電の3つを組み合わせることで、より安定した電力供給が可能になります。
太陽光で発電しながら蓄電池で家庭の電力を支え、必要に応じてEVからも給電すれば、長期間の停電にも対応可能です。
このように、トライブリッド蓄電システムは、災害時でも電力を途切れさせない「自立型エネルギーシステム」として機能し、非常時の安心感を高めます。
ライフスタイルの変化に合わせて柔軟に対応できる
トライブリッド蓄電システムは、家族構成や生活リズムの変化にも柔軟に対応できるのが特徴です。
たとえば、将来的に電気自動車(EV)を増やしたり、太陽光パネルを追加設置したりする場合でも、システムを拡張しやすくなっています。
そのため、ライフスタイルの変化に合わせて無理なくエネルギー環境をアップデートでき、無駄な再投資も防げます。
長期的に見ても、持続可能な暮らしを支える仕組みとして安心して利用できるシステムといえるでしょう。
長期的な投資価値が高い
トライブリッド蓄電システムは、電力の自家消費率を高められる点で経済的なメリットが大きいシステムです。
太陽光発電によってつくった電気を効率よく自家消費できるため、電力会社からの購入量を減らし、電気代を継続的に節約できます。
また、近年は売電単価が低下し、電気料金は上昇傾向にあるため、発電した電気を自宅で使う方が経済的なケースも多くなっています。
さらに、カーボンニュートラル社会への移行が進む中で、再生可能エネルギーを有効活用できる家庭の価値は今後ますます高まるでしょう。
長期的に見れば、エネルギーコストを抑えつつ環境貢献も実現できる、価値の高い投資といえます。
電気自動車(EV)や蓄電池に関するよくある質問

ここでは、電気自動車(EV)や蓄電池の導入を検討する際によく寄せられる質問をまとめました。
- 電気自動車(EV)や蓄電池を購入する際に利用できる補助金は?
- 太陽光発電と組み合わせるなら、電気自動車と蓄電池ではどちらのメリットが大きい?
- どんな電気自動車でもトライブリッド蓄電システムを使える?
- トライブリッド蓄電システムと一般的な蓄電池システムと何が違う?
- トライブリッド蓄電システム用の蓄電池は何がおすすめ?
以下では、これらの5つの質問と回答をわかりやすく解説します。
電気自動車(EV)や蓄電池を購入する際に利用できる補助金は?
電気自動車(EV)や家庭用蓄電池を購入する際には、国や自治体による補助金制度を活用することができます。
電気自動車(EV)には、国の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」があり、普通車で最大85万円、小型・軽EVで最大55万円が設定されています。
さらに加算措置もあり、条件を満たす場合は最大で約90万円の補助が受けることが可能です。
一方、家庭用蓄電池の導入には、国の「令和6年度補正 家庭用蓄電システム導入支援事業(DRリソース導入枠)」の補助金制度があり、家庭用蓄電システムをDR(デマンドレスポンス)リソースとして活用できることが条件となっています。
公募は2025年3月26日に開始されましたが、すでに予算到達により申請受付が終了しています。
これらの補助金は年度や申請時期によって条件が変わるため、申請前に国や自治体の最新情報を必ず確認するようにしましょう。
太陽光発電と組み合わせるなら、電気自動車と蓄電池ではどちらのメリットが大きい?
太陽光発電と組み合わせる場合、電気自動車(EV)と家庭用蓄電池のどちらにも利点がありますが、家庭のライフスタイルや電力の使い方によって最適な組み合わせは異なります。
たとえば、日中に発電した電力を効率よく使いたい家庭では、蓄電池にためて夜間に活用する方法が適しています。
一方で、EVを所有している家庭では、走行や非常時給電など多用途に電力を活かせる点が魅力です。
しかし、最も効率的で安定した運用を実現できるのは、両方を太陽光発電と組み合わせた「トライブリッド蓄電システム」です。
電気を「つくる・ためる・つかう」を最適化し、電力の自給自足に近い暮らしを実現できます。
どんな電気自動車でもトライブリッド蓄電システムを使える?
すべての電気自動車(EV)がトライブリッド蓄電システムに対応しているわけではありません。
トライブリッド蓄電システムを利用するためには、EVがV2H(Vehicle to Home)やV2G(Vehicle to Grid)といった双方向給電に対応している必要があります。
主な対応車種は、次のようなモデルです。
- 日産自動車 リーフ(新型・旧型)
- 三菱自動車 i-MiEVシリーズ
- 三菱自動車 minicab-MiEVシリーズ
- 三菱自動車 アウトランダーPHEV
これらの車種は、家庭への給電や太陽光発電との連携が可能なため、V2H機器を導入すれば家庭用蓄電池としても活用できます。
将来的にトライブリッドシステムの導入を検討している場合は、対応車種かどうかを事前に確認しておくことが重要です。
テスラ車+テスラ社蓄電池『パワーウォール』もおすすめ!
テスラ車は、現時点では車両から家庭へ直接電力を供給することができません。
つまり、一般的なトライブリッド蓄電システムのように「EVから家庭へ給電する」使い方はできないということです。
その代わり、太陽光発電でつくった電気を家庭用蓄電池「パワーウォール」にため、家庭で消費しながらテスラ車にも充電することは可能です。
この構成により、再生可能エネルギーを無駄なく活用でき、日常の電力利用を効率化できるようになります。
一般的なトライブリッド蓄電システムのように「テスラ車から家庭への給電はできない」ものの、テスラ独自のエネルギーシステムとして高い完成度を持っているため、テスラ車ユーザーにはおすすめです。
トライブリッド蓄電システムと一般的な蓄電池システムと何が違う?
トライブリッド蓄電システムは、太陽光発電・家庭用蓄電池・電気自動車(EV)の3つを連携させ、エネルギーを一体的に管理する仕組みです。
一般的な蓄電池システムが「家庭内で電気をためて使う」だけなのに対し、トライブリッドは発電・蓄電・給電を最適に制御できる点が異なります。
停電時には3つの電源を組み合わせて長時間の電力供給が可能になり、経済面でも太陽光の余剰電力を蓄電池やEVにためて活用することで電気代を削減できます。
また、1台のパワーコンディショナーで全体を制御できるため、機器コストや設置スペースを抑えられるのも特徴です。
太陽光で発電した電気を自家消費し、蓄電池とEVで効率的に貯めて使うことで、電力会社への依存を減らし、エネルギーの自給自足に近い暮らしを実現できます。
トライブリッド蓄電システム用の蓄電池は何がおすすめ?
トライブリッド蓄電システムに対応する蓄電池は、「対応メーカー」「容量」「拡張性」の3つに注目して選ぶ必要があります。
代表的な製品としては、ニチコンの「トライブリッド蓄電システム」シリーズが知られています。
同社の蓄電ユニットは、太陽光発電・EV・家庭用電力のすべてを統合制御でき、後からEVや蓄電池を追加することも可能です。
容量は一般家庭の場合、6.5kWh〜12kWh前後が目安ですが、太陽光の発電量やEVの使用頻度によって最適な容量は異なります。
導入時は、将来的な増設や家族構成の変化も見据えて選ぶと安心です。
電気自動車(EV)+蓄電池+太陽光発電(トライブリッド蓄電システム)でエコで賢い暮らしを実現しよう

この記事では、電気自動車(EV)を家庭用蓄電池として利用するメリット・デメリットを紹介し、さらにその発展型としてEV・蓄電池・太陽光発電を組み合わせたトライブリッド蓄電システムを紹介しました。
トライブリッド蓄電システムを導入すれば、昼間は太陽光で発電し、夜は蓄えた電気を使うことで、電力会社から購入する電気を大幅に減らすことができます。
また、停電時にはEVと蓄電池の両方から電力を供給できるため、非常時にも安心して生活を続けられます。
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国や地方自治体の補助金の使用にも対応しているため、お得に蓄電池の導入が可能です!






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